NOISETTE
フランスアンティーク雑貨取扱店『ノワゼット』
BLOG

映画『さよなら子供たち』

『さよなら子供たち』

大好きで何度も何度も観た、私がフランスに興味を持ち惹かれていったきっかけとも言える映画です。

 

『さよなら子供たち』は第二次世界大戦ナチス占領下時代、ルイ・マル監督の少年期を描いた自伝的映画。

と言っても殺戮などはなく、劇的な展開もなく、静かに物語は進んでいきます。

親と離れて寄宿学校に入っている12歳の主人公ジュリアン(ルイ・マル)は転入してきた勉強もピアノも優秀なボネと、ライバル視しながらも次第に友情を深めていきます。

ある日ボネが学校にかくまわれているユダヤ人だということを知り・・・。

 

車窓から見える田舎の何気ない風景も、

寄宿学校の白く塗られた外壁や、その中から覗くくすんだレンガや、木製の古びた白いドア、

階段の黒い手すりの曲線が織りなす優雅とシックの程よいバランス、

食堂の厨房に置かれたシンプルな中にも色形や質感に趣きのある調理道具や食器、

食堂の大きな木製の使い込んだテーブルやパニエ、

少年たちが着ている紺色の制服・・・

何気ないフランスの日常の風景だけど、その色調を抑えた映像に映し出される全てが美しかった。

 

ジュリアンが母に見送られて寄宿学校へ向かう列車の場面や、ボネがピアノを弾く場面で流れてくるシューベルトのピアノ曲『楽興の時 D.780 第2番』が、静かに進む物語を悲しくも優しく包む。

 

発せられるフランス語も、流れて来る音楽も、耳に心地良く心に染み入り、私のフランスへの憧れが沸々と湧きいでたのでした。

 

ほんのワンシーンですが、劇中子どもたちが並んで道を歩きながら歌うのはフランスの伝統的な曲『A la claire fontaine』という曲です。

私がフランス語学校に通っていた時に学校の図書館で借りたCDにこの曲が入っていて、少し悲しげで美しいメロディと歌詞に心惹かれたとても好きな歌でした。後に映画で子どもたちが歌っていたのと同じ曲だと気付いてなんだか嬉しかったんですが、15~16世紀に作られた曲だということも知りそんな昔に作られた曲なのに現在でも歌われていること、古さを感じさせないことに驚きました。良い曲は歌い継がれていくんですね。

 

「私は死ぬまであの1月の朝を忘れないだろう」

ルイ・マル監督自身の声でナレーションが入るその言葉に、ルイ・マル監督が直面した戦争の悲惨さと自身の悔恨が感じられます。

実際、「客観的に冷静に見つめて語ることができるようになるためには40年以上の長い時間が必要だった」と語っている。

監督にとってそれほどの思い入れがあり、原点とも言える映画なんだろうなと思います。

 

物語と、映像、音、全てがじんわりと染み入り、

観終わった後に何か考えさせられる、心に残る、そんな名作だと思います。

 

 

『さよなら子供たち』

1987年第44回ヴェネチア映画祭金獅子賞(グランプリ)受賞

1987年セザール賞(フランスのアカデミー賞にあたる)では7部門(最高優秀作品賞、監督賞、オリジナル脚本賞、撮影賞、編集賞、録音賞、美術賞)で最優秀賞を総なめにした。

1987年ルイ・デリュック賞受賞

1987年L.A.批評家協会賞外国映画賞受賞